持たない暮らしのその先の風景
私が「何も考えない空白の時間」を想像するとき、いつも心に浮かんでくる風景があります。
そこへ行くにはまず海を渡って島に行き、
きれいに整えられた森を歩き、
人気のない山道を進み、
川に突き当たったら・・・
ちょっとした秘密のルートを通って原生林に分け入ります。
その先で出会うのが一本の大楠。
近くの立て札によると、この木はこの島で一番美しい「久久能智(ククノチ)の聖木」と呼ばれているそうです。
ククノチのあるこの場所は、私が数年前にこの島を散策していた時に偶然見つけました。
当時は丁度雨上がりで、近くに人の声や人工的な音はまったくなく、森のあちこちから雨だれの音だけが響いていたのを覚えています。
そんな中で見つけたこの場所は、全く人目につかない場所にありながらとてもきれいに手入れされており、本当に大切にされているのだと肌で感じることができました。
そしてそこで雨のしずくの音だけを聞きながら過ごした数十分間は、完全に安らぐことのできる「何も考えない空白の時間」だったように思います。
それ以来、迷ったり疲れたり何かを決意しようとしていたりする時、ふらりとこの場所を訪れてはひとりでぼーっと過ごすようになりました。
そうすることで不思議と地に足がつき、より自分を客観的に振り返ることができるようになるからです。
私が「持たない暮らし」のその先に見るだろう風景も、何となくこの場所につながっているんじゃないかという気がしています。